認知症である母から見える世界を知りたくて、この本を読んでみました。
目から鱗のお話ばかりです。
私も母が認知症になってまず思ったのは「認知症=何もできなくなる」という間違った考えでした。パジャマのまま裸足で徘徊したり、怒ったり暴力的な老人、というイメージが強くありますよね。
でも母を見ていると、物忘れはあるけれども、判断力はまだあるし、穏やかだし、いつも笑顔で、徘徊など認知症のイメージが全然フィットしませんでした。
この本でも「なるほど!そうだよね!!!」と思えることばかりで、当事者の気持ちが聞けてとても参考になります。
例えば、
(認知症)当事者の暮らしは、診断後、初期の段階から自分で決めて工夫しながら行動している当事者と、診断直後から「認知症だからできない」と決めつけられて、制限や監視の環境のもとで生活するようになった当事者とでは、明らかにその後の進行や暮らしぶりが違うのです。
兄は最初「施設を考えた方がいいんじゃないか」と言い出すし、でも母を見ていると普段と変わらないし。一般的な概念に母を当てはめたくない!という思いがありました。
母が安心して暮らせる環境をサポートをまずはする!ということ。最初から「あれもだめ!これもだめ!」と言わずに、難しくなっていることをサポートする。
その理由のひとつは、地域包括支援センターの方が「生活のリズムが作れれば、安心して暮らせるのでは」ということと、友人が「普段の生活を維持することが大事かも。ヘルパーさんを頼んでみたら」と言われたことがとても大きかったです。
これって周りの人からするととても忍耐がいるけど、当人にとってとても大事なことなんだな、って思いました。
「ありがとう」と言われたい。自分も役になっている、と思いたい、と当事者は思っている。
そんな言葉もありました。
一般的に認知症の理解がTVやメディアで誇張されているな、と感じています。事実、この本の著者は39歳で認知症を発症し、認知症=老人ではありません。
実際私も母が認知症になるまで、間違った固定概念しかありませんでした。そうした周りの誤解が、認知症の方を益々生きづらくしてしまい、症状も悪化させていく原因かもしれないのです。
これから100年時代を迎える私たち全ての人にお勧めしたい本です。介護する側だけでなく、私たちも当時者になる可能性は大いにあります。その際に、諦めずに、よりよい人生を送れる心の準備ができる1冊だと思います。