ある森に、とても働き者のアリたちが住んでいました。アリたちは毎日、葉っぱを巣へ運ぶ仕事をしていました。
ある日、女王アリが言いました。「今日から新しいルールです」「葉っぱを1枚運んだら3枚運んだことにします」
若いアリたちは顔を見合わせました。「え?」「1枚は1枚じゃないの?」誰もが少し不思議に思いました。
でも最初に賛成したのは、巣の中で最も優秀だと言われているアリたちでした。彼らはすぐに計算したのです。葉っぱが何枚かは重要じゃない。評価されることの方が重要だ。
女王に認められれば、良い場所に住める。良い仕事ももらえる。それがこの森のルールだ。
優秀なアリたちは大きな声で言いました。「素晴らしいルールです!」「1枚は3枚です!」女王アリは大喜びしました。
それを見た他のアリたちも安心しました。頭の良いアリたちが言うなら、きっと正しいんだろう。
やがて巣の中は、「1枚は3枚!」「1枚は3枚!」の大合唱になりました。
そんなある日、巣の入り口から煙が入ってきました。森で火事が起きていたのです。何匹かのアリが叫びました。「火事だ!」「逃げなきゃ!」
すると優秀なアリたちは女王に聞きました。「女王様、火事です」女王は答えました。「今は葉っぱの集計中です」「関係のない話は後にしなさい」
優秀なアリたちは安心しました。女王がそう言うなら大丈夫だ。自分たちはルールを守っている。だから正しい。
彼らは再び葉っぱを数え始めました。他のアリたちも、頭の良いアリたちが大丈夫と言うなら大丈夫だろうと思いました。
やがて火は巣に届きました。それでも最後まで、アリたちは葉っぱを数え続けていました。
後になって森の動物たちは言いました。「あのアリたちは優秀だった」「働き者でもあった」「真面目でもあった」と。
森が燃えた原因は、火事ではありませんでした。考えることをやめたことでした。
おしまい。