ぼたむす日記

アラフィフおひとり様の仕事、介護、読書のこと

【読んだ本の紹介No.16】ケーキの切れない非行少年たち

おはようございます!

 

どこかで聞いたことがあったタイトル「ケーキを切れない非行少年たち」が本屋さんの目立つところにあり、パッと目に入ってきたので、購入しました。

www.shinchosha.co.jp

児童精神科医である著者が少年院で出会った子供たちは、認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすらできない。人口の16%程に相当するともいわれるIQ70~IQ85の「境界知能」が疑われる大勢の非行少年たち。「境界知能」の判定は難しく、その治療法もほとんど確立していない。

 

「社会から忘れられた人たち」である彼らが置かれた現状について、そして彼らが学校・社会生活で困らないよう、著者が推奨する実践的な方法を公開しています。

 

認知力が弱い、とは「聞く力」「見る力」「想像する力」が弱いということ。つまり人間関係でのコミュニケーション能力が低いこと。相手が何を言っているのか分からず話についていけない、相手の表情が読めないので、不適切な発言や行動をしてしまう、相手の立場や気持ちを想像できないので、不快にさせてしまう、など。

 

IQ70以上あれば、知的障害がないと判断されてしまい、適切な支援が受けられない。認知力が弱いにも関わらず、現在のIQ判断だけでは、正確な判断は難しいのだそう。

 

コミュニケーション力の低い彼らは、自分の犯した罪を反省することもできず、また罪を繰り返してしまう。

 

実際のところ、平成30年の知的障碍者数は約108万人、平成25年の54.7万人と比べると、5年間で倍になっている。通常知的障害者が急激に増えることはなく、認知度が高まったから。しかし一方で「境界知能」のように、支援が必要なのに気づかれていない知的障害者がたくさんいる、ということでもあります。

 

ではなぜ今「境界知能」の人々の存在や生き辛さ、が浮き彫りになってきているのか。

 

今や第三次産業(サービス業)の割合が仕事全体の7割にもなるそう。第一次産業(農業、林業、漁業)、第二次産業(製造業、建設業、鉱業)の比重が多かったひと昔は違い、人間関係が中心の仕事が大半を占めています。コミュニケーションを苦手とする「境界知能」の人々は、対人スキルに問題があるため、仕事を選ぶ上でも不利になります。時代の流れとともに、彼らの存在が語られるようになったのだ。

 

SNSでも誹謗中傷をしてしまう人が、この「境界知能」ではないか、と言われていますよね。一見すると普通に見える彼らも、実は認知力が弱いので、相手の立場を考えることができず、衝動的に暴言を吐き、不快な思いにさせても、「悪いと思わない」「反省することもない」のだ。

 

第三次産業への流れは益々加速していくでしょう。生きづらいと感じている人も多くなるはず。社会全体の問題として、「境界知能」の人々の生きづらさを理解し、適切な支援が受けられるようになることで、非行少年を減らす、引いては「誰もが生きやすい世の中」になるでは、と感じました。

 

社会に出ると、学校とは違い、自分と同じような人としか接しなくなります。視野が狭くならないよう、ビジネス書やエッセイ以外の、こうした社会啓発系の本もどんどん読んでいきたい、と思いました。